工学者のための解剖レシピ
動物の身体の構造に興味がある
教科書だけじゃわからない、動物の真の姿を知りたい
動物のように生き生きと動くロボットを作りたい
このページでは、工学系の実験室でも解剖を実施できるレシピを紹介します

本レシピは、東洋大学の郡司助教、東北大学の福原助教、大阪大学の増田助教が共同で開発したものです。
はじめに注意
本HPで紹介するレシピは全て「新鮮な食肉」の解剖を前提としています
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非食用肉、未冷凍肉の解剖には細菌やウイルス・寄生虫のリスクが伴います。
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また食用であったとしても、腐敗した肉を扱うと感染症のリスクが伴います。
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「新鮮な食肉」以外を解剖する際は絶対に本HPを参考にしないでください。
解剖後の骨肉や、汚染された消耗品の廃棄方法に注意してください
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解剖関連品の廃棄ルールは、ただの食肉であっても機関によって大きく異なります。
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食肉であっても、専門の業者を通じた廃棄が必要な場合もあります。
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必ず、安全衛生管理等の部署に「食肉解剖の可否」と「廃棄方法」を確認してください。
安全と衛生を常に意識して解剖を行いましょう
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解剖中のケガ・感染症に注意する。応急処置、緊急連絡先の準備を忘れずに。
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実験用の水回りを利用する。飲食用の水回りと分ける。使用後はハイターで消毒を。
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骨肉だけでなく、血などの液体も全て拭き取って廃棄することを推奨します。
必要品
JCM ヨコ型冷凍庫 1200*600*800 JCM
ハサミ
替刃メスハンドル (フェザー) 1個
解剖用メス 替刃メス 対応ホルダー#4 1箱(100枚)
フェザーブレイドリムーバー 1式(10個)
トゲ抜き用ピンセット 1本
不織布ガウン ブルー(10枚入)
ゴム手袋
キムタオル
フェザー解剖刀・脳刀ハンドル F100 脳刀
フェザー解剖刀替刃 NO.100 (5マイイリ) 解剖刀
Wag ペットシーツ 厚型 ワイド 42枚x2袋(84枚)
アルミ保温・保冷シート 1.2m巾×1mカット グレー
ステンレスバット
ステンレストレー
シカ肉
ゴミ袋
洗い場
【オプション】
クールプレート ノーマル
ジビエ加工・販売業者など
指定のもの
飲食用途で共用しない
CP-940 62-8143-50
1台 158,400
(別途運搬料などが必要)
1個 989
1個 6,589
1個 5,929
1個 1,969
1個 2,001
1個 2,189
1個 659
1個 2,833
1個 5,319
1個 3,235
1個 2,200
1個 13,090
1個 692
ここまで計20.6万円
時価(前後脚 計数万円)
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1台 346,500
計60万円
解剖の手順

事前に、「食肉解剖の可否」と「廃棄方法」を安全管理の部門に確認しておきましょう。廃棄方法は所属機関によって大きく異なります。
衛生のため、解剖に使った手袋やエプロンなどの消耗品も全て、骨肉などの固形物と一緒に廃棄しましょう。
また、解剖中に出る血や液体なども極力シンクに流さずに、ペットシートやキムタオルで拭き取って固形物として廃棄しましょう。
廃棄待ちのゴミは腐らないように冷凍庫で凍らせておきましょう。
解剖を開始する前に破れにくいゴミ袋をセットして全てをそこに捨ててしまえば、廃棄物による汚染を最小限に抑えられます。
0. 廃棄方法の事前確認

解剖用品を購入します。最低限の道具としては、ハサミ、メス持ち手、ピンセット1種、ステンレスバット(野球に使う棒じゃないです。大型の金属容器。)があればスムーズに解剖できます。その他もあると便利です。
消耗品として、メス替え刃、ゴム手袋、ゴミ袋、ペットシート、保冷シート、キムタオルは必須です。
1. 解剖道具の購入

冷凍庫、ステンレスバットをセッティングします。クールプレートは高価ですが、あると非常に便利です。室温によらず腐敗を防ぐことができます。
冷蔵庫は60×120cmの省スペースに設置可能なものを選定しました。肉を冷やし続けて鮮度を保てば臭いは少なくなるため、工学系の実験室であっても苦情なく作業できると思います。
ただし、クールプレートがない場合は、部屋全体をクーラーなどで冷やす必要があります。
肉の温度が上がって腐敗しはじめると当然臭いが出てきますので注意してください。肉に粘り気が出てくると温度上昇のサインですので、再び肉を冷やすことをオススメします。
2. 冷凍庫の設置

まずは業者から冷凍シカ肉を購入します。自社工場を持っておられるジビエの食肉業者に依頼してチルドで郵送してもらいましょう。
写真のシカ肉は1本1万円~で、手足首から先が切断されています。毛皮付きの完全な脚部はもう 少し高価です。小型のウサギやワニなどはAmazonなどでも購入できます。
重要なのは冷蔵庫に入るサイズをリクエストすることです。この冷凍庫の場合は最大75*34*16cmです。平常業務から外れた、少し特殊なリクエストをすることになるので業者さんへの感謝の気持ちを忘れずに。あまり無理を言わず、相手の立場を尊重して、お互いに気持ちよく取引できるようにしましょう。
3. 冷凍シカ肉の購入

解剖をする前日に準備を行います。
ステンレスバットにゴミ袋をかぶせておいて、液漏れによる汚染を防ぎましょう。このまま包んで廃棄すれば汚染を最小限に抑えられます。
このあたりで解剖の手順の確認と、ケガの応急処置の準備、緊急時の連絡先の確認を行いましょう。解剖中に指を切るだけでも、報告が必要なほどの重大インシデントであると理解してください。
4. 解剖台のセッティング①

生肉から出た液体(ドリップ)は衛生的に危険です。今回は、ペットシートでドリップを吸収することで飛散を防ぎます。
シートの上に凍ったシカ肉を載せます。シカ肉はパックされていても、されていなくてもOKです。パックされていない場合は、乾燥を防ぐためにサランラップをかけておくか、ステンレスバットにしっかりと蓋をしておきましょう。
ここから一晩かけて解凍していきます。
5. 解剖台のセッティング②

シカ肉を解凍している様子です。保冷シートを掛けておくと丁度いい温度を保ったまま解凍が進みます。シート内を10度以下に保つのが理想的です。
解剖中に肉の温度が上がって粘りが出てきた場合にも、クールプレートを動かしたまま保冷シートを掛けて少し待てば状態が 改善します。
クールプレートがない場合はクーラーを強めにかけて室内を冷やし続けましょう。クールプレートがあれば室内は常温でも問題ありません。
6. 冷凍シカ肉の解凍

しっかり解凍されているのを確認したら、まずは各所の手触りを確かめてみよう。手で組織を破いてみるのもオススメです。関節を動かしたり、筋肉を引っ張って手応えを感じることも大切です。触ってみないと、壊してみないと分からないことが沢山あります。
ただし刃物などを使う場合は安全のために1人ずつ作業しましょう。
7. い ざ解剖!

メスはとてもよく切れるので注意しましょう。最初のうちは力のかかりすぎない鉛筆持ちで握り、メスの先に指を置かないようにしましょう。複数人で作業にあたる時は、接触事故を予防 するために、刃物をもつ人は1~2人にしましょう。
手やピンセットで組織を引っ張りながら、剥がれそうな部分をメスで軽くなぞって剥がしていくイメージです。
危険なので、最初は決して力だけで一度に切ろうとしないように。一度で切れなければ、根気よく何度も何度もメスでなぞりましょう。
メスは油脂を帯びて段々切れなくなってきます。危ないなと思ったらすぐに新品の替刃に交換しましょう。
8. メスで組織を剥がしていく

解剖した組織を触って・壊して・よく観察しましょう。組織の絵を描いてみると、自然と注意深く観察するようになり、構造をよく理解できるようになります。
解剖する前に観察する目的を決めておくと、「なんとなく解剖をして、なんとなく終わっちゃった」という事態を防げます。
解剖台の隣に解剖学書を置いておくのをオススメします。筋肉や骨の同定に役立ちます。
9. 組織を観察・同定する

膜や筋肉を取り除いたら関節を解剖してみましょう。関節周りの靭帯や、関節を覆っている関節包はかなり頑丈なのでケガに注意。組織をピンセットで引っ張りながらメスで慎重に切断していきましょう。
10. さらに関節を解剖していく

組織をサンプルしてZiplocなどで保存しましょう。
解凍後の肉を再冷凍すると特性が変化するので注意してください。食肉業者さんの冷凍技術は優れているので特性が変化しづらいらしいという話もあります。
11. 組織のサンプル

最後に、解剖した骨肉や、拭き取った液体、手袋等をゴミ袋で包んで冷凍庫に保存します。このとき、メスや替刃が混入しないように注意しましょう。
再三の注意になりますが、廃棄方法は所属機関によって大きく異なるので、必ず関係の部署に確認を取りましょう。
12. 片付け① 廃棄

解剖における最大の困りごとは肉や液体による汚染や感染症の危険です。
①解剖で使用した手袋などの消耗品は全て肉と一緒にゴミ袋に入れて冷凍しましょう。
②飛び跳ねや汚染を防止するために血などの液体は極力流さないように。全て拭き取って廃棄しましょう。道具等にこびりついた、仕方のない液体のみを洗い流しましょう。
③実験用の水回りを利用しましょう。水回りやスポンジは飲食用の水回りとは分けましょう。菌を含んだ水の飛び散りに注意。
④使用後はシンクをハイターで消毒するとより安全です。
⑤使用済みの メスやピンセットは油脂と菌で汚れているため、お湯と洗剤で洗うとよいです。
13. 片付け② 洗浄
当サイトのコンテンツは、各自の責任のもとで安全・衛生に十分配慮してご利用ください。
当サイトの利用、解剖レシピの実践により、万一、ご利用者様に何らかの不都合や損害が発生したとしても、本研究会は何らの責任を負うものではありません。
【参考文献】
増田,郡司,福原「工学者のための解剖レシピ:ロボット実験室でできる省スペースの解剖法」日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会, 1A1-F13,名古屋,6月,2023.
